業界トピックス

弁護士の中途採用事情【後編】:事前に確認しておくべき法律事務所/企業の種類と業務内容、難易度

目次
  • 1.五大法律事務所/外資系法律事務所

  • 2.企業法務系法律事務所

  • 3.一般民事/刑事法律事務所

  • 4.ブティック型法律事務所

  • 5.企業での企業内弁護士

  • 6.まとめ

  • 1.五大法律事務所/外資系法律事務所

  •  社会的に知名度の高い大規模案件を扱ったり、大手企業の重要な意思決定に関与したりするなど、大がかりな案件を多数受任するため、パートナー弁護士と数人のアソシエイト弁護士、パラリーガルがチームを組んで事件にあたることがほとんどです。
    事務所によって、完全にチームがわかれている場合やゆるやかにチーム分けされていて複数のチームの仕事をする場合などがあります。ただし、いずれの場合も基本的にはひとつのチームに軸足を置いて業務を行うことになります。弁護士登録から数年以内は、アソシエイト弁護士として、パートナー弁護士の指示のもとで業務を行いながら学んでいくことになります。どのパートナー弁護士のチームに所属することになるかによって取扱い分野や業務内容が異なり、その後の専門性にも影響します。

     五大法律事務所や外資系法律事務所は、基本的に司法試験に上位合格した人を新人弁護士として採用しますので、転職活動でこれらの事務所を目指す場合、難易度は極めて高くなります。また、これらの事務所は事務所内に国際弁護士を抱えており、渉外案件も多数扱うため、少なくともビジネスレベルの英語力が求められます。アメリカのロースクールに留学することがパートナー弁護士になるための事実上の要件となっている事務所もありますので、語学(特に英語)への苦手意識は払拭しておくとよいでしょう。

  • 2.企業法務系法律事務所

  •  中堅規模の企業法系法律事務所でも、チーム制を採用している場合が多くみられます。もっとも、アソシエイト弁護士は複数のパートナーから仕事を振られ、幅広い案件に携わりながら徐々に自分の専門を見つけてくという場合が多いようです。事務所の規模が大きいほど、アソシエイト弁護士の裁量は狭くなる傾向にあります。業務分野としては、大手企業から中小企業、ベンチャーなどの顧問弁護士を多く手掛ける点がこの種の法律事務所の特徴といえるでしょう。日系企業の海外進出サポートや外資企業のインバウンドサポートを行う法律事務所などもあり、五大法律事務所に比べてそれぞれの事務所の特色がわかりやすい場合が多いです。

    こういった事務所は、五大法律事務所を辞めたアソシエイト弁護士や、比較的若いうちに裁判官・検察官を辞めて弁護士になった人を多く採用する傾向にありますので、そういったバックグラウンドがない場合、転職難易度は高いといえます。

  • 3.一般民事/刑事法律事務所

  •  多くても弁護士数十人以下という、比較的小規模の法律事務所が多く、教育体制などは事務所によって異なるものの、1年目から案件を任せてもらえるケースが多いようです。基本的には個人や中小・零細規模の企業に関する案件を扱うことが多く、先輩弁護士と2~3人でペアを組んで案件にあたりながら、早い段階から個人受任も増やしていくことが求められます。大がかりな案件を扱う場合には、事務所全員でチームとなって対応したり、他の法律事務所の弁護士と共同で受任する場合もあります。

     最近では、税理士、司法書士、弁理士など、隣接分野の専門家を法律事務所で雇用し、ワンストップで顧客対応できることをアピールポイントとする法律事務所も増えてきています。
    小規模な法律事務所が経験弁護士を採用する場合は、即戦力として事務所の売上や案件対応に貢献することが求められていますので、これまでの経験とは大きく異なる分野を扱う法律事務所に転職を希望する場合、難易度は比較的高いものとなるでしょう。

  • 4.ブティック型法律事務所

  •  一定の専門分野に特化した法律事務所を、ブティック型法律事務所といいます。近年では、金融、労働、知財、会社法、独禁法、倒産、刑事など様々なブティック型法律事務所があります。専門特化しているので、他の法律事務所にはない高度な案件が集まる傾向があり、そのため、経験弁護士の採用においては、即戦力となれる程度に、その分野で一定以上の経験を積んでいることが求められます。また、幅広く業務を経験したいという人には向かず、その専門分野を極めたいと考える人に適した法律事務所といえるでしょう。

  • 5.企業での企業内弁護士

  •  業種による違いはありますが、どの企業においても契約法務が業務の中心となります。企業によっては、商事法務、戦略法務、リスクマネジメント、コンプライアンス、訴訟対応などがはいってくることも多いです。

    法務組織が整っていない企業の立ち上げの場合は、一から法務運営をしていくことになりますので、契約法務のひな型の作成や、社内のコンプライアンス研修のための資料の作成などにいちから携わることもあります。企業内に法務組織を備えている場合であっても、顧問弁護士を付けていたり、大がかりな案件のときには大規模法律事務所に依頼したりすることは多々あります。そういったときには、依頼した法律事務所の弁護士とスムーズにやりとりをするための窓口として、企業内弁護士が重要な役割を担うことになります。

    中途採用の場合、基本的には即戦力採用です。特に、初めて企業内弁護士を雇うという企業の場合には、社内で一人だけの弁護士有資格者になりますので、数年以上の企業法務経験があることが採用条件になっている場合も少なくありません。一方、既に複数の企業内弁護士がいて、研修・教育体制が整っている企業においては、経験よりも将来性を重視して採用する場合も多々あります。

    企業内弁護士(インハウスローヤー)の現状

  • 6.まとめ

  •  ここに挙げたのは、法律事務所や企業の種類別に、その特徴を概観したものに過ぎません。実際の転職活動の際には、このような大まかな特徴を踏まえた上で、個々の法律事務所・企業の個性にも着目しながら、エントリー先を選んでいかれるとよいと思います。

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  • 記事提供ライター

  • 社会人経験後、法科大学院を経て司法試験合格(弁護士登録)。約7年の実務経験を経て、現在は子育て中心の生活をしながら、司法試験受験指導、法務翻訳、法律ライターなど、法的知識を活かして幅広く活動している。

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