業界トピックス
弁護士業務のIT化とコロナ禍の影響
- 目次
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1.はじめに
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2.弁護士業務のIT化
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3.コロナ禍によるリモートワークの実現
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4.おわりに
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1.はじめに
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弁護士は、未だに紙とFAXをありがたがっている職業というイメージを抱かれているのではないでしょうか。しかし、実際には、弁護士の多くは業務のIT化に積極的です。そして、2020年2月ごろより日本でも発生した新型コロナウイルス禍(コロナ禍)をきっかけに、弁護士のワークスタイルは大きく変化し、法律事務所に出勤することもない完全リモートワークを実現する弁護士が大幅に増えました。ここでは、弁護士業務におけるIT化の実際を紹介します。
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2.弁護士業務のIT化
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日本の裁判制度では、紙の原本を提出し、業務連絡をFAXで行っています。民事裁判のIT化の実現に向けて動き出してはいますが、紙とFAXを完全に捨てられるのはだいぶ先の話になるでしょう。
それでも、裁判所への提出書面はPCのワープロソフトで作成しています。仕事で作成する契約書も、ワープロソフトで作成し、電子メールで納品することが通常です。
電子メールは、電話と異なり、時間を気にせず送受信ができます。履歴が残る、長文を送れる、添付ファイルをつけやすい、PCと親和性が高いというSNSにはない技術的な利点もあります。さらに、業務時間外には読まなくても許される文化です。そのため、弁護士は、古くから電子メールに慣れ親しんでおり、ビジネスシーンで電子メールの使用が一般化されてからは、法人顧客とのやり取りは電子メールで行ってきました。近年は、スマートフォンの普及により、個人顧客も添付ファイル付の電子メールに対応してくれるようになったため、裁判所以外との業務連絡は、ほぼ全てが電子メールになりました。
また、インターネットFAXを導入する弁護士も増えてきました。押印した書面もスマートフォンがあればデータ化できるので、PCとプリンターさえあれば、どこからでも裁判所とFAXをやり取りできるようになりました。営業FAXによって紙とトナーが消費されないことも、インターネットFAXの無視できないメリットです。
日々の経理も、クラウドサービスを導入し、インターネットバンキングや交通系ICカードと連携させることにより、省力化が可能です。マイナンバーカードを取得すれば、自宅から確定申告もできます。
その他、e内容証明や登記情報提供サービスも弁護士業務に大いに役立っています。かつては、法律事務所の立地を考える際には裁判所だけでなく郵便局や法務局へのアクセスも考えるようにアドバイスを受けたものですが、今はその必要はなくなりました。
弁護士特有の業務のIT化としては、法令・判例データベースの利用が挙げられます。弁護士は、どんな仕事をするにも法令・判例を調査しますが、疑問が浮かぶたびに図書館に行くのではとても時間が足りません。そのため、かつては、ほぼすべての弁護士が、毎年度の六法と、本棚に複数の判例雑誌のバックナンバーを並べていました。毎年度の六法を並べるのは、過去の事件には当時の法律が適用されるからです。図書館に行く時間が惜しいならば手近に作れば良いという強引ながらも合理的な発想から、法律事務所の本棚は増殖していました。法令・判例データベースの機能はその名の通りで、図書館の中から弁護士に必要な部分のみを、より検索性が高い形でサービス化したものです。今ではほとんどの弁護士が利用しているので、これからの法律事務所は本棚が減っていくのではないでしょうか。
このように、弁護士は、保守的なイメージに反して、便利なITサービスが登場すれば積極的に導入してきました。
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3.コロナ禍によるリモートワークの実現
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コロナ禍により、弁護士のワークスタイルは大きく変化し、かつては考えられなかったリモートワークが実現しました。その大きな要因は、以下の3点であると考えています。
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3ー1.クラウドストレージの普及
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筆者が2010年ころに勤務していた法律事務所では、あらゆる書面はデータ化され、NAS(ネットワーク対応HDD)で共有されるとともに、セキュリティ業者から遠隔でのバックアップとウイルス監視を受けていました。ところが、自宅からNASにアクセスするためには、高価なVPNを敷設する必要があり、結局、データを参照しながら書面を作成するためには、法律事務所に足を運ぶ必要がありました。
また、当時はタブレットが存在しなかったため、書面をデータ化しても可読性が高い形で持ち出すことが難しく、裁判の度に、重くて分厚い裁判書類を運んでいました。裁判書類は警備の厳重な法律事務所に保管したいため、裁判の前後に法律事務所に立ち寄っていました。
タブレットは既に安価に購入可能です。後はNASをクラウドストレージに置き換えれば、弁護士は法律事務所から解放されます。しかし、クラウドストレージには、データ流出が発生した場合に、これに依頼者の秘密を保管した弁護士がどこまで法的責任を負うのかという問題がありました。
コロナ禍の中で、法人顧客から大容量データを受け取る際に、クラウドストレージへの共有権限が付与されることが増えました。以前はファイル便によることが大半でしたが、おそらく、リモートワークを実現するためのクラウドストレージ導入、ファイル便よりもクラウドストレージの方がセキュアだという認識、の双方が理由でしょう。法的責任の根拠となる注意義務の内容は社会通念に照らして判断されます。筆者は、ようやく弁護士によるクラウドストレージの利用が許されたと判断しました。
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3-2.民事裁判のIT化
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新型コロナウイルスが登場する前から民事裁判のIT化は議論されており、2020年2月から、裁判手続の一部をWEB会議で行えるようになりました。コロナ禍により、WEB会議は当初想定よりも積極的に利用されています。遅れていた議論がギリギリ間に合ったという奇跡的なタイミングでした。
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3-3.弁護士会会則改正
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弁護士は、原則として、弁護士会の委員会に出席する義務を負います。以前は、弁護士会館に集まっての委員会しか、適式なものとして認められませんでした。そのため、新型コロナ対策として会則改正がなされ、委員会は、会場参加もWEB参加も可能なハイブリッド形式で開催されるようになりました。
会則改正には弁護士会の総会決議が必要でした。しかし、コロナ禍の中で定足数を確保できるか不透明である上に、定足数を満たせば会場が密になりかねません。かといって、新型コロナウイルスが去ることを待っていては、委員会を弁護士会館で開催せざるを得ません。当時筆者は弁護士会の常議員であったため、役員や職員がとても苦労して会則改正を実現したことをよく覚えています。
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4.おわりに
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弁護士は積極的に業務のIT化を推進してきましたが、それでも、法律事務所を起点に、裁判所や弁護士会館を行き来することが必要でした。しかし、コロナ禍をきっかけに、これまでのIT化の努力が実を結び、弁護士も、リモートワークを実現できるようになりました。リモートワークができる職場を探している方や色々な働き方に興味がある方は、是非C&Rリーガル・エージェンシー社にお気軽にご相談ください。自分に合った働き方を実現できる職場をご紹介致します。
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記事提供ライター
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弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。
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