業界トピックス

小話~弁護士の外食事情~

目次
  • 1.高級料亭で会食?

  • 2.実録高級料亭

  • 3.東西の昼食事情

  • 4.イケてるお店

  • 5.飲み歩くがバブリーではない

  • 1.高級料亭で会食?

  • ドラマを見ていると、悪役の有力者がその弁護士と高級料亭の日本庭園に面した個室で密談しているシーンが登場します。そのためでしょうか、若手弁護士の中には、弁護士同士は高級料亭で親睦を深めるものなので、生活に余裕のない自分は弁護士の集まりに参加できないと考えて孤立してしまう方もいるようです。実際にはそんなことは全くなく、弁護士が好むのはきらびやかな高級店よりも落ち着いた雰囲気のリーズナブルなお店です。今回は、筆者の知る限りで弁護士の外食事情を紹介したいと思います。

  • 2.実録高級料亭

  • 筆者は弁護士会内のある親睦団体に所属しています。親睦団体では年会費を徴収しており、それを元手に、若手が研修合宿(ガチ)に参加する際や勉強会(ガチ)後に親睦会を開催する際に補助金を出しています。きちんと勉強をしていると成果物が出版されたり講演依頼が舞い込んだりするので、若手にも活躍の機会が訪れます。そうなれば、団体としては、うちには研究熱心な若手が揃っていますから、と世間に対してええ格好ができるので、お酒で若手のモチベーションを支えるのです。筆者は研修合宿や勉強会に真面目に参加してきたので、通算でかなりの量のお酒を補助されてきました。どうやら弁護士会内ではお酒は通貨としての機能を備えるようです。

    2020年からの新型コロナウイルス(コロナ禍)により研修合宿も勉強会もオンライン開催になってしまい、後輩たちが会費でお酒を飲めない日々が続きました。これでは我々はなんのために会費を支払っているのかわかりません。そんな中、2021年の忘年会シーズンは自粛要請が一時的に解除されました。若手に補助金を出せなかったので会費が余っている、忘年会はコロナ禍に入会した若手にとって初めての対面イベントである、ならばいっちょやったるか、我々は後輩に夢を見させるつもりで慣れない高級料亭に突撃しました。筆者だけでなく、筆者が所属する団体にとっても、高級料亭は非日常の空間であることがおわかりいただけるかと思います。

    ところが、大人数であったため、せっかくの高級料亭だというのに大広間での着座式パーティー、しかも感染症対策のため目の前にはアクリル板という状況になってしまい、ドラマで見るような個室での悪そうな密談を経験することはできませんでした。筆者たちはつくづく高級料亭に縁がないと思い知りました。

  • 3.東西の昼食事情

  • せっかくの機会なので弁護士の昼食事情についても紹介したいと思います。まず、弁護士は、夜は徒党を組んで飲み歩きますが、昼食は一人で採る傾向にあります。単独行動が多い職業だからです。そして、筆者は関西の地方都市で弁護士となった後に東京に移っていますが、東西の昼食事情は全く異なるという印象です。

    関西時代の筆者のホームグランドとなる地方裁判所は最寄り駅から徒歩10分程度の距離にあり、道中にたくさんの飲食店がありました。筆者は、同日の午前と午後に期日が入っているときは時間つぶしをかねて、朝一以外の午前に期日が入っていればその後に、午後から期日が入っていればその前に、裁判の度に昼食を楽しみにしていました。控訴審になると大阪高等裁判所へのプチ出張が発生します。大阪高等裁判所は梅田駅からのアクセスが悪いのですが、その分、道中で昼食を楽しめました。

    東京に移ってからの筆者の昼食は味気ないものになってしまいました。東京地方裁判所は霞ヶ関駅出口前にあり、道中に飲食店が入り込む余地はありません。事務所からのアクセスも良いので、期日のついでに昼食を取る気分にならなければ期日間の時間をつぶす必要もありません。そのため、筆者のお昼は、いつも事務所近くで牛丼や立ち食いそばを食べたり、コンビニで弁当を買って帰ったり、備蓄のカップラーメンを食べたりと面白味がありません。東京では控訴審になってもプチ出張は発生しません。友人たちに聞いてみても、各々の事務所近くのお店か弁護士会館地下でしか昼食を取らないようです。東京の弁護士も出張の際にはご当地グルメを楽しみにするなど食に関心はあるので、東京は裁判にかこつけて昼食を楽しむには便利すぎる(移動に無駄がない)のだと思います。

  • 4.イケてるお店

  • 本題である夜のお話に移ります。弁護士業界には、イケてるお店(飲食店)を知っている弁護士はなんか格好良いという普遍的な価値観があります。お店にとっても後輩を引き連れてきてくれる弁護士は良いお客さんです。イケてるお店を後輩に紹介できれば同業者からもお店からも一目置かれるので、弁護士たるもの、イケてる行きつけのお店をできれば複数用意しておくべきです。筆者は先輩方からそのように教わって育ちました。

    イケてるお店というとバブリーな高級店をイメージされるかも知れません。しかし、後輩の立場になってみれば、バブリーな高級店を紹介されても別世界の話であり自慢としか感じません。筆者のような弁護士会内の便利屋になると、先輩に高級店に連れて行かれれば厄介ごとが降ってくる前振りだと察知して警戒を強めます。後輩が紹介されて嬉しいのは、雰囲気が良いのに自分のお財布でも利用できるリーズナブルな価格帯のお店です。そのような都合良いお店を教えてもらえれば先輩への尊敬が芽生えます。このようなお店が弁護士業界におけるイケてるお店です。

    弁護士が好むお店の雰囲気は東西で変わりありません。どちらでも落ち着いた隠れ家的な雰囲気が好まれます。同業者で仕事の相談をしていれば、実名は絶対に出さないものの依頼者の特殊事情に触れざるを得ない場合も多く、それが許される環境を求めているからでしょう。

  • 5.飲み歩くがバブリーではない

  • 弁護士のメリットは、自由な働き方ができるので連日深夜まで飲むことも可能であること(ほぼ午後からしか働かない弁護士も多いです。)と、仕事関係の誰かと同席すれば飲食費が経費になることです(依頼者からのカジュアルな法律相談や同業者との仕事の進め方についての相談が発生することが前提です。)。そのため、弁護士は必然的に飲み歩くことになりますが、その飲み方は決してバブリーではありません。少なくとも筆者の経済力で飲み歩くためにはお店を選ぶ必要があり、多くの弁護士が同様なのだと思います。限られた予算の中で雰囲気の良いお店を探してくることが弁護士の力量と言えるのかも知れません。イケてる先輩たちを見ているとそう思います。

  • 記事提供ライター

  • 弁護士
    大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。

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