業界トピックス
法律事務所の職員の仕事内容、弁護士と職員の関わり方について
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1.法律事務所の職員の職種と仕事内容
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2.弁護士と法律事務所の職員との業務の関わり方
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3.法律事務所の職員と良好な関係を築くために弁護士に求められること
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4.まとめ
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1.法律事務所の職員の職種と仕事内容
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法律事務所ではどのような人が働いているのでしょうか。
規模が小さい法律事務所では、「弁護士」と「事務職員」が働いています。事務職員は、弁護士のスケジュール管理、電話対応、来客対応、郵便物の処理、コピー、FAX送信、ファイリング、小口現金の管理、裁判所や法務局などへのおつかい、清掃など、一般事務を一手に引き受けています。ベテラン事務職員の場合、大規模法律事務所の「パラリーガル」に相当するような、より専門的な業務を任されることもあります。
規模の大きい法律事務所になると、「事務職員」とひとくくりにせず、一般事務を担当する「秘書(セクレタリ)」と、弁護士の指導・監督の下で法律業務を担当する「パラリーガル」に分かれることが多いです。パラリーガルは、専門的なリサーチをおこなう、文献を踏まえて必要な資料を作成する、弁護士の打ち合わせに同席してメモをとる、契約書などの文書のドラフトを作成する、といった、専門性の高い業務をおこないます。一定の法的知識が求められますが、法学部を出ていることは必須ではありません。最初は秘書として就職した人が、経験を積みながら、所内で実施される認定試験を受けてパラリーガルとなっていくケースも多くみられます。
また、渉外案件を多数取り扱う法律事務所では「トランスレーター」が置かれていることもあります。トランスレーターは法律文書の翻訳を専門におこなう人たちで、高度な語学力が求められます。特に法的な専門用語については日本語・外国語のいずれについても理解していなければなりません。
五大法律事務所ほどの規模になると、「受付」「IT」「人事」「経理」のような部署が置かれ、定期的に部署異動がおこなわれるなど、より一般企業に近い形になっています。
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2.弁護士と法律事務所の職員との業務の関わり方
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法律事務所の弁護士は、個人や企業の抱える法的トラブルを解決するのが仕事です。扱う業務分野は、所属する法律事務所によっても異なりますが、大きく分けて一般民事事件(貸金や賃貸借など、日常生活から発生するトラブル)、企業法務案件(企業に関する契約書作成、交渉、M&Aなど)、刑事事件(逮捕や起訴された人の弁護)、家事事件(離婚・相続などの家庭内トラブル)に分類されることが多いです。
では、これらの事件に対応する弁護士と、法律事務職員はどのような業務の関わり方をするのでしょうか。
まず、事務職員(大規模事務所でいう「秘書(セクレタリ)」)は、弁護士の日々の業務スケジュールを把握し、必要に応じて、会議室の予約、来客対応、出張の際の旅券の手配をおこないます。「受付」がいる法律事務所では受付が来客対応することが多いです。また、弁護士の外出時はもちろんですが、弁護士が所内でデスクワークをしている時であっても、最初に電話対応するのは事務職員の仕事になります。特に刑事事件や破産事件が大きく動いている時などは電話も頻回にかかってきます。正確に聞き取り、メモを残すことで、弁護士の手間を省きます。また、事件記録についても、事務職員が事件ごとにファイリングすることで、紛失や混乱を防ぎます。音声データの文字起こしや、事件現場に同行して写真撮影を手伝う場合もあります。
次に、パラリーガルやトランスレーターはより専門的な点から弁護士をサポートしています。パラリーガルが高度なリサーチや契約書の第一ドラフト・レビューなどを担うことで、弁護士は自分で調べたり一から起案したりする手間が省け、業務効率が上がります。また、法律分野では厳密な対応が求められますので、ネイティブレベルのトランスレーターによる正確な翻訳は、契約内容についての誤解やミスを防ぐためにとても有用です。
このほか、大きな事務所にのみ置かれるIT部門は、PCなどの不具合への対応、イントラネットの管理、インターネット関連のセキュリティの強化などを担っています。また、人事は、弁護士を効率的にサポートできる人材を見極めてスタッフの採用をおこないます。経理は、現金管理などはもちろん、顧客に対して請求書を送るという作業をおこなっています。多数の顧客がいる弁護士にとって、請求書の作成作業は膨大かつミスが許されないため、経理の作業はとても重要になります。
これらの業務は、手間がかかるうえに、専門知識やノウハウを持った人がおこなう方が効率的、効果的といえます。分担して業務を行うことで弁護士を支え、弁護士は法律業務に集中して取り組むことができるのです。
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3.法律事務所の職員と良好な関係を築くために弁護士に求められること
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弁護士は、依頼者の代理人として、依頼者の利益を最大限追及することが仕事です。最も、十分にその力を発揮するためには、法律事務所の職員のサポートが必要不可欠です。関係が良好であれば、時には少し無理をしてでもサポートしてくれるでしょうし、良好でなければ最低限のことしかしてもらえないかもしれません。
では、法律事務所の職員と良好な関係を築くために、弁護士が心掛けるべきこととは何でしょうか。
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(1) 相手に配慮した言動を心掛ける
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弁護士は事務職員などのスタッフからすれば目上の立場になりますが、だからこそ相手に配慮した言動が必要です。弁護士は、業務がたまっている時や、担当している案件が思うように進まない時にはイライラすることもあると思います。しかし間違ってもそのイライラを周囲の人にぶつけることのないよう注意が必要です。立場が上の人から物を言われているというだけで、相手は「威圧的」と感じることもあるかもしれません。物を頼む時、誤りを指摘する時などの言い方には十分な配慮を心掛けましょう。新人弁護士の場合は特に、ベテランスタッフから見れば「立場は上でも経験は下」です。周囲に配慮した振る舞いを意識しましょう。
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(2) 指示を丁寧に伝える
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事務職員やパラリーガルなどに指示を出す際には、丁寧に伝えましょう。法律事務所での業務経験の浅いスタッフに対してはもちろんのこと、ある程度経験のある人であってもあらゆる業務を経験しているとは限りません。相手の法的知識レベルや経験値を確認しながら、指示内容が正しく伝わるようにすることが大切です。専門用語ばかりで話したり、当然わかってくれるだろうと思って内容を端折ったりすると、思わぬ齟齬が生じ、ミスにもつながりかねません。指示を受ける側は、弁護士に対して「ここがよくわかりません」と言いにくいこともあります。弁護士の方からフォローしてあげるとよいでしょう。
また、複雑な指示の場合、口頭ではなくメールやメモなどを使って後からも確認できる形でおこなうことで、ミスの防止にもつながります。五月雨式で指示を出さずにできるだけ必要事項をまとめて伝える、期限を最初に明確にするなど、指示を受けた人が作業しやすいかどうかを意識して必要な情報を伝えることも大切です。
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(3)相手の業務状況に配慮する
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弁護士は一度に多数の案件を処理しなければならないことが多い仕事です。多い人では同時に60~70件程の事件を担当していることもあります。しかし、事務職員も当然そのすべてをサポートしてくれるはずだと思ってはいけません。自分以外の弁護士がその事務職員に業務指示を出している可能性もありますし、残業という概念がない弁護士とは異なり、事務職員には規定の業務時間があります。指示をされた方は、よほどのことがない限り「できません」とはいえないということを理解し、その人が今抱えている業務量はどのくらいなのか、業務時間内に無理なくこなせる範囲で作業指示を出しているか、きちんとコミュニケーションを取りながら進めていくことが肝要です。
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(4)感謝を表現する
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弁護士から見れば、職員の仕事は「簡単な仕事」であるように思えるかもしれません。しかし、それらの仕事を法律事務所の職員がおこなってくれるからこそ、弁護士は法律業務に集中することができるということを忘れてはなりません。一日に何件もかかってくる電話への応対をはじめ、備品の管理・補充、ファイリング、お茶出し、おつかい、清掃といった作業をすべて自分でやらなければならないとしたら、どれだけ大変でしょうか。細々とした必須の業務を担ってくれているスタッフに対して感謝の気持ちを忘れず、常に態度や言葉で示すことは良好な人間関係を築くうえでとても大切です。
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4.まとめ
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法律事務所ではたくさんの方が様々な役割を担って働いています。先に述べたことは当たり前のことではありますが、改めて意識することで、互いを尊重しながら協力し、円滑に業務全体を進めることができます。また、より一層の信頼関係を築いていくことで、弁護士は弁護士として必要なスキルアップに注力することができるようになり、良い結果を残せる仕事ができるようになるのではないでしょうか。
取り扱い分野、事務職員の人数や役割分担などは法律事務所によって様々なので、転職活動を考える際には、このような視点も視野に入れて活動するのもよいかもしれません。
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記事提供ライター
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社会人経験後、法科大学院を経て司法試験合格(弁護士登録)。約7年の実務経験を経て、現在は子育て中心の生活をしながら、司法試験受験指導、法務翻訳、法律ライターなど、法的知識を活かして幅広く活動している。
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