業界トピックス
法律事務所での勤務経験のみの弁護士が企業へ転職する際の注意点
- INDEX
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1.はじめに
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2.転職時の年齢
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3.企業によって求められる能力は異なる
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4.法律事務所での取扱分野
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5.働き方、ライフスタイルの変化
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6.まとめ
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記事提供ライター
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サイト運営会社:株式会社C&Rリーガル・エージェンシー社
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1.はじめに
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司法試験合格者の平均年齢は、令和4年度、令和3年度ともに28.3歳で、それ以前もほぼ同水準で推移しています。令和4年度合格者の最高年齢は68歳、最低年齢は18歳であることを考えると、合格者の年齢の中央値は、28.3歳よりも低いと推測されます。合格者の多くが20歳代であること、法科大学院経由での合格者が多数を占めることを考えると、弁護士の多くは、社会人経験がないまま、弁護士としてのキャリアをスタートさせていることがわかります。
弁護士になった後、企業内弁護士、いわゆるインハウスローヤー(以下単に「インハウス」といいます)になるためのルートは、新人弁護士としていきなり企業に就職するパターンと、一旦法律事務所での勤務を経験してからインハウスに転身するパターンに大別されます。社会人経験がないまま弁護士となることが通常なので、どちらのパターンであっても、インハウスの多くは、それ以前に企業での勤務経験がない状態で、インハウスとしてのキャリアをスタートさせることになります。
ここでは、後者のパターン、法律事務所での勤務経験しかなく、企業での勤務経験がない状態で、インハウスに転身する際の注意点を考えます。
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2.転職時の年齢
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弁護士に限らず、どのような職種での転職であっても、年齢に応じた能力が求められます。若ければポテンシャルに期待されることもありますが、年齢が高ければ高いほど、企業は即戦力であることを求めます。
一般論として、年齢が高くなるにつれて、マネジメント能力や高度の専門性が求められるようになります。大規模法律事務所でチームを率いるパートナーであった場合には、これらを認められやすいでしょう。
大規模法律事務所のパートナーでなくとも、いわゆる企業法務の取り扱いが多く、顧問先企業から、契約書の添削・作成や、新規事業のリーガルチェックの依頼を数多く受けてきたならば、即戦力の法務部員として期待されます。
企業法務の取り扱い経験がない場合でも、現に多数の紛争を抱えている企業に対しては、訴訟経験とそれを通じて得た将来紛争の予防能力を訴求できるでしょう。
年齢それ自体よりも、自身がどのようなキャリアを歩んできて、転職先企業でそれをどのように活かせるのかが重要です。
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3.企業によって求められる能力は異なる
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一口にインハウスと言っても、その仕事の内容は様々です。勤務先企業の訴訟代理人となって毎日のように訴訟の場に立つインハウスもいます。訴訟には一切関わらず、契約書の添削や作成を中心に稼働するインハウスもいます。同じく契約書を添削する場合でも、勤務先の業種によって、契約書の内容は異なります。新規事業に積極的な企業のインハウスには、ビジネスアイデアを、ビジネスモデルあるいは契約スキームに落とし込むことも求められます。
企業によってインハウスの仕事内容が様々ならば、求められる能力も様々です。特定分野の大型案件に関わった経験が求められることもありますし、ゼロから契約書を作成した件数が求められることもあります。法的な知見を積極的に経営に取り入れることを期待され、ビジネスへの関心が問われることもあります。弁護士ならば法律的な能力は十分であるとして、それよりも、リズムが安定した社会人生活に飽きずに耐えられるか、上司の指揮監督に従うことに過度なストレスを感じないかが問われることもあります。
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4.法律事務所での取扱分野
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法律事務所での勤務経験しかない弁護士が企業へ転職する際には、自分の法律事務所での勤務経験を活かしたいと考えることが通常でしょう。そして、企業によっては、採用選考において、法律事務所でどのような分野を取り扱ってきたかを重視することもあります。
大規模な法律事務所で、特定の得意分野を磨き上げてきた弁護士は、その得意分野についての経験を求めている企業で活躍しやすいです。
複数の業種にわたる子会社を統括するホールディングスのインハウスになる場合には、特定の法律分野についての知見よりも、必要に応じて幅広く関連法規を調査できる能力が求められることもあります。法律や裁判例だけでなく、官公庁や業界団体のガイドラインまで調査してきた経験があれば評価されやすいでしょう。
一般民事事件しか扱ったことがないという弁護士であっても、訴訟代理人となることを求めている企業にはマッチするでしょうし、勤務先と顧問弁護士との間の窓口として活躍する際には、自分も法廷に立っていた経験が役立ちます。
法律事務所での取扱い分野がどのようなものであっても、そこで培った能力を活かせる企業とマッチングできることが重要です。
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5.働き方、ライフスタイルの変化
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法律事務所に勤務する弁護士は、ほとんどが個人事業主です。自分が最も成果を出しやすい働き方を自分で作り上げて、結果的に長時間労働になることが多くとも、自分で時間を自由に使うことが可能です。毎日昼から深夜まで働くが、朝は遅くまで寝ているという弁護士も珍しくありません。
企業に勤務するインハウスは、弁護士資格を持っていても勤務先の従業員であり、会社員やサラリーマンと呼ばれる立場です。管理監督者に出世するまでは、残業という概念があります。自分は夜からが本番だからと主張しても、これ以上は残業するなと上司に帰宅を強いられることもしばしばです。朝は通勤ラッシュに耐えなければなりません。サラリーマンにとっては当たり前のことでも、昼まで寝ていることが許されていた弁護士にとっては、大変なことです。
もちろん、インハウスならではの良さもあります。法律事務所に勤務する弁護士は、裁量次第でいつでも休日を作れますが、忙しければ休みなしで働き続けなければなりません。一方のインハウスは、有給休暇を利用すれば、毎年決まった日数を確実に休日にできます。また、法律事務所に勤務する弁護士は、厚生年金に加入できないため、老後への備えを自分で考える必要があります。一方のインハウスは、厚生年金に加入できるので、法律事務所に勤務する場合と比較すれば、老後に向けて悩む必要はありません。
法律事務所に勤務する場合と企業に勤務する場合の一番の違いは、収入かも知れません。一般論として、法律事務所は、不安定だが高給で、企業は、安定しているが法律事務所と比較すれば給与が低いと言えます。もっとも、法律事務所での勤務は長時間になる場合が多いので、法律事務所にも割増賃金があると仮定するならば、企業に勤務する場合の方が、時給が高い計算になることも多いでしょう。
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6.まとめ
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法律事務所での勤務経験しかない弁護士が企業に転職する際には、自分が培ってきた能力と、企業が求める能力とのマッチングが重要です。C&Rリーガル・エージェンシー社は、2007年の創業以来弁護士の転職活動を支援しており、数多くの弁護士が法律事務所から企業へ転職するお手伝いしてきました。企業への転職をお考えの際には、C&Rリーガル・エージェンシー社にお声がけください。培われた能力にマッチする企業をご紹介いたします。
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記事提供ライター
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弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。
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弁護⼠、法務・知財領域に精通したプロフェッショナルエージェンシーです。長きに渡り蓄積した弁護士・法律事務所・企業の法務部門に関する情報や転職のノウハウを提供し、「弁護士や法務専門職を支える一生涯のパートナー」として共に歩んでまいります。
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