業界トピックス
弁護士白書が面白い 数字からの新たな発見
- 目次
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1.弁護士白書とは
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2.弁護士白書の特徴
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3.数字が並んでいることの意味
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4.気になった数字
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5.白書は読まれるためにある
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記事提供ライター
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サイト運営会社:株式会社C&Rリーガル・エージェンシー社
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1.弁護士白書とは
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弁護士白書という刊行物をご存じでしょうか。日本弁護士連合会によると、「弁護士白書は、弁護士数などの基本的情報から弁護士の活動状況に関する統計のほか、各弁護士会や日本弁護士連合会の活動などについて、幅広い範囲のデータを扱っており、弁護士や弁護士会の実態を広く知っていただくことができます。また、毎号特集を組み、弁護士・弁護士会が取り組んでいる課題について詳細な資料を掲載しています。」(https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/publication/whitepaper.html)とのことです。
白書というと政府刊行物のイメージがあるので、意味を調べてみると、参議院法制局による記事(https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column094.htm)にいきあたりました。いわく、「白書というものは中央官庁の編集する政府刊行物である、そしてその内容は政治、経済、社会の実態及び政府の施策の現状について国民に周知させることを主眼とするものである、こういうことであります。」「その言葉の由来は、英国において政府が作成する外交報告書の表紙が白(white paper)であったことにあると言われており」ということでした。
弁護士自治により、弁護士会は弁護士という国家資格を管理している点において、国家機関と同様の機能を果たしていますから、弁護士白書なのかなと思いました。ここでは、弁護士白書の面白さについて紹介します。
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2.弁護士白書の特徴
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弁護士白書は、例年、年度ごとの特集記事と統計情報から構成されています。年度ごとの特集記事については、日本弁護士連合会の該当ページ(https://www.nichibenren.or.jp/document/statistics.html#tokushu)をご覧ください。
特集の内容は、弁護士会の活動(2020年度等)、個々の弁護士の実態(2021年度等)、司法制度の問題点(2022年度等)と、弁護士に関係するものでありながら、バリエーション豊かです。そして、どの特集においても、表とグラフが多数並んでいます。統計情報も、当然、表とグラフばかりです。表とグラフは、どちらも数字に基づいて作成されるものですから、弁護士白書の最大の特徴は、数字に基づいていることだと言えるでしょう。
弁護士の仕事は説得です。単に、あのお店のラーメンは美味しいと言うだけではなく、店主の来歴や使われている食材、看板メニューの開発秘話や客層を調べ上げて、そのお店のラーメンには特別な価値があると訴えることが弁護士の仕事です。しかし、弁護士白書になると、事実を数字で客観的に把握して、数字の意味がわかりやすくなるように表やグラフを用いて説明するのですから、弁護士白書の特徴は、弁護士らしくないことにあるとも言えるように思えます。
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3.数字が並んでいることの意味
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筆者は経済学出身なので、現実社会を数字で表現するあるいは数字で把握することが大好きです。一旦数字にしてしまうと、計算の対象とすることができますし、数字を並べるだけでも変化を追うことができるようになります。
弁護士白書においても、数字を並べるメリットが活かされています。例えば、弁護士の平均年収は高いが、たくさん稼いでいる一部の弁護士と、あまり稼いでいない多数の弁護士がいるので、儲かるわけではない、というだけでは、なんのことだかさっぱりわかりません。しかし、年収5,000万円の弁護士が5人と年収500万円の弁護士が20人いるとわかるならば、平均年収は1,400万円と高額だが、格差が大きく、弁護士自体は儲かる職業ではないことがはっきりとわかります。昔は儲かっていたが今はそれほど、と言われても、そんなものですか、としか言えません。昔は年収3,000万円だったが、今は1,000万円だとわかって、初めて、3分の1に激減しているが、なお悪い稼ぎでは決してない、ということがわかります。
弁護士の人数や所得、事件数などと、毎年調査していることにも大きな意味があります。10年前の弁護士白書と現在の弁護士白書を合わせ読めば、10年間でどのような変化が起こったのか、数字の比較から理解することができます。
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4.気になった数字
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このコラムを執筆するにあたって、あらためて弁護士白書を読んでいたのですが、気になる数字がありました。隣接士業の人口の推移(https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2022/1-3-7.pdf)です。
近年、弁護士業界のみならず、一般紙や経済誌でも、弁護士が急増していることが頻繁に取り上げられています。そのため、筆者は、隣接士業の中で、弁護士だけが急増しているという誤解を抱いていました。実際に、弁護士は、2013年に33,624人であったのが、2022年には44,101人と、約31%増加しています。筆者は2013年には弁護士になっていましたから、後輩が1万人以上増えたと思うと感慨深いものがあります。
しかし、他士業にも目を向けてみると、弁理士も2013年には9,644人であったのが、2022年には11,653人に、約20%増も増加しています。公認会計士に至っては、同じ10年間で24,964人が33,215人と、弁護士の増加率を上回る約33%の増加となっています。隣接士業でも、弁護士業界の一部で騒がれているような弁護士の貧困のような問題が発生しているのか、特に公認会計士はどのような目的で急増しているのか、とても気になりました。
司法書士の人口推移も気になります。司法書士全体では、2013年20,979人が2022年22,907人と、約9%の増加に過ぎません。しかし、簡裁における訴訟代理権を付与されている司法書士は、2013年には14,483人と、当時の司法書士全体の約69%であったのに、2022年には17,863人と、司法書士全体の約78%にまで伸びています。司法書士にとって、簡易裁判所における訴訟代理権が魅力的な市場であると評価するべきでしょう。弁護士は活動領域の拡大ばかりを志向しているように思えますが、既存市場の価値を見直すべきかも知れません。
弁護士白書には、数字化された大量の情報が詰め込まれています。筆者は、隣接士業の人口の推移だけを見ても、様々な新たな発見をすることができました。
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5.白書は読まれるためにある
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弁護士白書は、「弁護士や弁護士会の実態を広く知っていただく」ことができるものです。そのため、日本弁護士連合会は、白書の抜粋をインターネット上で公開しています。弁護士業界に興味が湧いたとき、あるいは、弁護士業界の現在や過去からの変化を知りたくなった時には、ぜひ、弁護士白書を読んでみてください。弁護士業界の今と過去からの変化を知るだけでなく、筆者のように、新しい発見をすることができると思います。
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記事提供ライター
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弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。
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