業界トピックス

弁護士にとっての副業とは

目次
  • 1.弁護士は副業ができる?

  • 2.弁護士が副業をするための条件

  • 3.弁護士が副業するメリット・デメリット

  • 4.弁護士が副業する前に確認しておきたいこと

  • 5.弁護士の副業例

  • 6.まとめ

  • 1.弁護士は副業ができる?

  • 司法制度改革によって弁護士の登録人数が増加した結果、企業や官公庁、地方自治体で活躍する組織内弁護士は珍しい存在ではなくなり、自ら起業する弁護士も登場しています。様々な場所に弁護士が進出していく中で、一人の弁護士が複数の場所で同時に活躍する副業が注目されています。

    実は、弁護士は、古くから副業をすることが当たり前の職業で、企業の役員を務めたり書籍を執筆したり裁判所で調停員を務めたりしてきました。ここでは、実際に弁護士がどのような副業をしているのかについて、副業のルールやメリット・デメリットを踏まえて解説します。

  • 2.弁護士が副業をするための条件

  • 弁護士にとって、副業には2つの意味があります。1つ目は、弁護士業務以外の業務という意味、2つ目は、勤務先以外における業務という意味です。先ずは、1つ目の、弁護士業以外の業務をするための条件について見ていきます。

    弁護士法30条1項は、1号において「自ら営利を目的とする業務を営もうとするとき」2号において「営利を目的とする業務を営む者」に勤務するときに、届出義務を課しています。

    何をもって「自ら営利を目的とする業務を営もうとするとき」にあたるのかは程度問題です。資産を増やそうと企業の株式を保有するだけならば届出は不要です。しかし、株式の保有割合が高くなり実質的に企業を経営している状態になれば届出が必要になります。判断に悩んだ場合には、所属する弁護士会に相談することが確実でしょう。

    同条同項2号はわかりやすく規定されています。従業員として企業に勤務する企業内弁護士は届出が必要です。取締役に就任する場合には届出が必要ですが、監査役に就任する場合には届出は不要です。

    この他にも、弁護士法22条は、「弁護士は、所属弁護士会及び日本弁護士連合会の会則を守らなければならない。」とし、日本弁護士連合会会則第28条の3は「常時勤務を要する報酬ある公職を兼ねるとき」に所属弁護士会への届出義務を規定しています。副業をする際には必要となる条件、手続については、所属弁護士会に確認を取ることが望ましいです。

  • 3.弁護士が副業するメリット・デメリット

  • 弁護士が、弁護士業務以外の副業をするメリットは、経済的利益と、弁護士業務に与える好影響に大別されます。

    自ら立ち上げたベンチャー企業が成功して、巨額の富を得ている弁護士もいます。司法試験に合格したばかりの若手弁護士にとっては、司法試験受験指導校で講師をしたり答案を添削したりすることは貴重な収入源となり得ます。

    書籍執筆や講演は、それ自体から利益をあげることは難しいのですが、弁護士としてのブランディングに繋がります。テレビやラジオなどのメディアに出演することも弁護士としての集客力に結びつきます。動画配信サイトで表現活動を行う弁護士が珍しくなくなりましたが、その主たる目的は、配信の収益化ではなく、視聴者を弁護士業務での顧客へと誘導することでしょう。

    副業のデメリットは、弁護士業務に悪い影響が出てしまうリスクです。役員を務めている企業が問題を起こし、新聞報道されるような事態になれば、弁護士業務に深刻な影響が出てしまいます。また、動画配信サイトでの表現活動がネット炎上を招いてしまえば、弁護士としての評価を下げることになります。

  • 4.弁護士が副業する前に確認しておきたいこと

  • 一番に確認するべきは、副業がデメリットを招いてしまうリスクです。軽い気持ちで企業の役員に就任してしまい、その企業が、弁護士が役員に名を連ねていることを宣伝文句に詐欺行為を働くことがあれば、責任は重大です。企業法務系の仕事をしているのに、専ら労働者に寄り添う立場から書籍を執筆すれば、顧問先は良い気分がしません。

    次に確認するべきは、勤務先のルールです。これは、勤務先以外の業務という意味での副業をする際に問題となります。

    法律事務所に勤務している場合、勤務先を介さずに依頼を受ける個人受任は許可されているのか、報酬の何割を勤務先に収める必要があるのか、勤務先の人員や設備は利用できるのか、などのルールに加えて、利益相反に注意する必要があります。特に労働事件を労働者側から個人受任する場合には、その相手方が勤務先の顧問先企業であるかどうかの確認は必須です。

    企業内弁護士の場合には、弁護士業務が副業になりますが、それが企業内での業務と無理なく両立できるのか判断する必要があります。書籍執筆や講演も、所属する企業の名前を出しての行動となるので、許可が必要であることが通常です。他の企業の役員に就任することは、許されないことが多いでしょう。

  • 5.弁護士の副業例

  • 一番多いのは、企業の役員、特に社外監査役でしょう。企業の外部から、公正な立場で、専門的な知見をもって企業を監査するには、弁護士は適任です。弁護士にとっても、安定した報酬が得られるだけでなく、著名企業の役員となることはブランディングに繋がります。

    学校の講師も多く見られます。法科大学院や法学部で法律を教えるだけでなく、広く小学校から大学まで出向いて、法律の役割を伝えたり、弁護士の職業紹介をしたりします。公益活動として位置づけられると同時に、弁護士としてのブランディングにもなります。

    特に若い弁護士は、司法試験受験指導校の講師をすることが多いです。未だ経済的基盤が安定しない間は貴重な収入源となるだけでなく、直近の受験事情に詳しいので適任でもあります。

    書籍の執筆もよく行われます。利益が出ることはほぼないのですが、ブランディングに資する上に、執筆活動を通じて知識の整理とスキルアップも果たせるので、弁護士業務への好影響は大きいです。

    WEBライターとしても、弁護士以外が執筆を行うよりも高い報酬が期待できます。記名記事であれば、書籍よりも手軽に名前を世に出すことができることも魅力です。

    メディア出演をする弁護士もいます。専門家としてコメントを求められることもあれば、芸能プロダクションに所属してレギュラー番組を持つ弁護士もいます。いずれにせよ、最も効果的に知名度を獲得できる副業です。メディア出演と同じ目的から、動画配信サイトでの表現活動も行われています。

    税理士やフィナンシャルプランナーの資格を持ち、依頼者に対して幅広いサービスを提供する弁護士もいます。

    法律事務所に勤務しながら個人受任をしたり、企業に勤務しながら余暇に弁護士として法律相談を受けたりすることも副業です。

  • 6.まとめ

  • 以上ご紹介した通り、弁護士の活躍の場は広がっています。しかし、法律事務所や企業に勤務している場合には、副業が本業の妨げにならないように注意するとともに、勤務先のルールに従うことが必要です。C&Rリーガル・エージェンシー社では、副業の具体的なルールの確認も行いながら、就職/転職の支援を行っています。将来のキャリアデザインや、その実現のためにはどのような副業が認められる環境が望ましいのかについても、お気軽にご相談下さい。

  • 記事提供ライター

  • 弁護士
    大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。

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